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■末世炎上 

『末世炎上』 諸田玲子

時は平安。表面的にはきらびやかでありながら、その実、末法思想のはびこる荒んだ世の中。
京の都で暮らす貧しい平民の子・髪奈女(かみなめ)は、水汲みに出かけた際に貴族の子息どもにかどわかされ、廃寺にて集団で犯される。その場に打ち捨てられた髪奈女が意識を取り戻したとき、「吉子」という全く別の人格が彼女の体を支配していて、髪奈女としての記憶は全く失われていた。そして、そんな彼女を拾い上げたのが、うだつの上がらない役人・橘音近(たちばなのおとちか)。彼に仕えながら、「吉子」は徐々に恐ろしい過去と、自らの素性を思い出して行く。一体彼女は何者なのか。そして髪奈女は、本来の自分を取り戻すことが出来るのか。



平安時代を舞台にしたミステリ風味の物語。一応裏表紙には「時代青春小説」と書かれているが、あんまり青春小説という感じはしないかなぁ。

吉子として暮らすことになった髪奈女という少女が、時々夢で見る出来事や、所持していたお守りの筒みたいなものなどからヒントを得て、主人の音近たちと共に自らの素性を探ろうとする。すると、なぜか200年前のある出来事と吉子の関わりが明らかになってくる、というのが本筋の話。
それと連動するように、昇進などに無関心でどこか諦観してしまっていた音近や、家柄だけはいいものの、ただただ無為な生活を送っていた貴族の子息・在原風見(ありわらのかざみ)と悪たれ仲間の少年たちが、徐々に精神的に変化して行く様子も描かれていて、物語に厚みを増す効果を与えている。

結構ボリュームのある小説の割に、一気に読める。
それはストーリー展開が速いのと、謎の解明の小出し加減がちょうどいいから。
途中で明らかになる「吉子」の正体についても、おお、この人のことだったのか、と少なくとも自分は驚かされました。


ただ、人物造形についてはちょっと物足りなさを感じたなぁ。
髪奈女や音近に関してはそうでもないんだけど、風見やその友人である伴信人(ともののぶと)や紀秋実(きのあきざね)については、ちょっと消化不良な感じ。
信人なんて、髪奈女を集団レイプした張本人なのに、特に何も罰されるわけでもなく(別件でちょっと牢屋に入ったりはしたけど)、ちょっと反省してもうおしまい。
髪奈女だって、あんなにショックを受けるほど酷い目に遭ったにも関わらず、仕返しに信人に肥(こえ)をぶっかけただけでそれ以降何もなし。
別に小説に勧善懲悪なんて求めていないけど、この辺りの描写はどうも物足りないというか、納得がいかない感じがして残念だった。

まあ、この辺りは人それぞれ感じ方が異なると思うので、気にならない人もいるとは思うけれど......。
小説全体としては面白かっただけに、その点だけはもったいない気がした。






末世炎上 (講談社文庫)末世炎上 (講談社文庫)
(2008/06/13)
諸田 玲子

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